ウィルス病…植物への感染経路と予防法のまとめ

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ウィルス病とは

ナノサイズの生物とも言えないもの、それが「ウィルス」。植物にもウィルス感染があり、基本的に感染すると治療はできず、ワクチンも存在するが、一般家庭のガーデニングでは利用は少ない。ウィルスには種類があり、ほとんどの植物がどれかのウィルスが感染する。感染してもすぐには症状が出ず、症状が出てもすぐには枯れない。徐々に弱って生育しなくなる。感染した株から、接触・虫媒介・土壌などで別の株へと感染するため、感染次第、感染した株を廃棄するしかない。

複数のウィルスに感染することもあり、その際は症状が劇的に出ることもある(ウィルスの種類による)。

最初に簡単にまとめ

●植物はウィルスに感染すると治療方法はない。
●虫を媒介して感染するケースが多いので、害虫を駆除するのが一番の予防。
●感染した株に触れた手で他の株に触れると感染が広がる。作業する前は手指を消毒しましょう(石鹸で洗えばいいです)。
●剪定をするハサミやナイフを使い回すと感染が広がる。道具は1株ごとに消毒しましょう。
●ウィルス病が発生したら株ごと廃棄するのが通常。
●野菜・果樹なら即刻廃棄。園芸植物も基本的には廃棄するが、希少種であれば隔離して栽培して様子を見るのも手です。
●他の病害虫でも似たような症状が出る。特にウィルス病の初期は区別がつかないので、冷静に判断しましょう。

ウィルス病はなぜ存在するのか?

ウィルス病が存在するのはおかしいですよね。感染力がこれほどまでで、植物を枯らせ、治療のできないウィルス病が存在するなら、この世界に「植物」は存在できないんじゃないか?って思いませんか?

もしも自然界で強毒ウィルスが発生したら?

もしも自然界で強毒のウィルス病が発生すると、その一帯はウィルスで植物が枯死します。植物が死滅してしまうと、ウィルスも存在できない。…そういうウィルスは植物とともに死滅する。そこで生き残るためにウィルスは徐々に弱毒になり、感染しても悪さはしなくなる。ウィルスは存在し続けるために「弱毒化」するのがセオリーです。

ウィルス病自体は自然界にいくらでも存在します。ただ、ほとんどのウィルスは上記の理由から「無害」か「ほとんど無害」になります。その中からたまに変異して強毒化したものが生まれても、自然界では消滅してしまいます。

ところが農作物だと人間が「枯らせない」ようにする。また、感染した株の近くに新たな植物を植える。しかも同じ種類の…つまり感染しやすいものを植える。そうして強毒ウィルスは延命するわけです。

人間は野菜を品種改良する。品種改良は「見た目」「味」「栽培しやすさ」に重きを置かれているため、「強い」植物が残らず、弱い種も淘汰されない。ウィルス病の蔓延は人間の経済活動も大きな要因です。
●ウィルスの中には葉っぱに斑を出現させるものや、矮化させるものもあり、これらを利用して園芸植物を仕立てることもある。

植物は無策ではない

植物にも免疫があり、ウィルスに対して無策ではありません。例えば、タバコモザイクウィルスに対して耐性のある株が現在は流通していて、感染しにくくなっています。また、ウィルスに感染すると、感染箇所を切り離すなどして対処することもあります。ただ、ウィルスは変異が早く、植物の対応では間に合わないことが多いので、人間が防除する必要があるのです。

症状

モザイク
葉にモザイク状の模様が現れる。この模様から「モザイク病」と呼ばれることもある。症状が出てもそれで枯れるというわけではないので、放置していると感染が広がる。

萎黄・萎縮
葉っぱが黄色く変色する症状。また、縮れるという奇形になる。生育不良となる。

壊疽
黒く変色して壊疽する。

症状からのウィルス病診断について

ウィルス病の症状は特徴がない。ネットで検索しても「これだ!」と言える画像はない。検索するとわかりますが、「モザイク」といっても、明確に「あぁ、モザイクだなぁ」って症例の画像ってあんまりないんですよ。あなたが、自分の植物にウィルス病の疑いを持って、画像検索してみても、「似ているように見えるけど、違うようにも見える」ってことがほとんどです。

そもそも、感染しても株が健康だと症状が出なかったり、症状が薄いこともよくある。気温によっても違う。また、程度が違う同じ症状が出るウィルスが複数あり、千差万別なんです。ウィルス病だと思っていたら、違っていたということもよくある。単に病害虫だったり、肥料不足などの環境要因のこともある。そもそもウィルス病は専門家でもゲノム解析しないと断定はできないくらいなんです。

ただ、ウィルス病だったときに感染拡大して被害拡大が甚大になるので早めに対処するのが一般的。野菜・果樹なら疑惑の時点で即刻廃棄。園芸植物の場合、希少種でないなら廃棄し、希少種ならば一縷の望みをかけて、隔離栽培して様子を見るといいです。
●縮れていても、それがウィルスが原因とは限らない。アブラムシやハダニといった虫に汁を吸われた結果かもしれない。よく観察してみる。
●野菜栽培では条件がほぼ同じ状態で栽培しているのに、一つの株が異常に生育が悪い、葉っぱに異変があるとなると、明確にウィルス病だなと判断できる。仮にウィルス病ではないとしても廃棄した方が無難。園芸植物だと、こういう判断が難しい。
●ウィルス病に感染したと思った鉢を隔離して栽培していると、翌年以降に葉っぱが正常になって、「感染してなかった」ってことはよくある。異変の原因がウィルスとは限らない。単に調子を崩しただけってこともある。
ウィルス病の記事を読むと、全ての症状が「ウィルス病」に見えるウィルス恐怖病になりがち。冷静になりましょう。

ウィルス病の感染経路

虫による感染(害虫駆除で予防)

ウィルスに感染した植物で汁を吸ったアブラムシ・スリップス・コナジラミが飛んできて、感染が広がる。これらの害虫を早めに駆除することがウィルス感染予防に効果がある。

接触感染(消毒して予防)

ウィルスに感染した植物に触れた手で他の植物に触れるとことで、感染する。例えば、感染した株を引っこ抜いて廃棄した後に手を消毒せずに別の株に触れると感染する。また、剪定で使ったハサミやナイフを消毒せずに使い回すと感染する。消毒は煮沸消毒が一般的。沸騰させた鍋で10分煮沸。もしくはリン酸三ナトリウム(Na3PO4)の飽和水溶液に浸して消毒する。数本のハサミを用意し、消毒して使用→また水溶液に浸す→使用すると1鉢ごとにハサミを替えて使う。石灰・ハイターでも。リン酸三ナトリウムは高価なので次亜塩素酸水が便利。またハイターはなお安い。
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感染した植物の葉っぱが、未感染の葉っぱに当たるだけでも感染する。なので、植物と温室で何鉢もくっつけて栽培していると大変なことになる。シンビジウムといった葉っぱが暴れているタイプは特に

土壌感染

感染した植物の落ち葉・根・茎をそのまま土に残すと、土壌にウィルスが残り、ウィルスが根から感染する。よって植物が感染したら、株ごと全てを取り除かないと、あたり一面「全滅」することもある。ウィルスは腐食分解されると消えるので、土に水をやって葉・茎・根を腐らせるといいです。

種子感染

種子についたウィルスが発芽後に感染すること。感染した株から取れた種子は使わないことで予防できる。

細菌を介して

空気中を浮遊するカビに付着して、ついでにウィルス感染することがある。

予防

とにかく害虫駆除

大抵は他の敷地からアブラムシ・コナジラミ・スリップスなどの害虫がウィルスを運んでくる。なので、これらの害虫を駆除するのが何よりの「予防」になる。シルバーマルチなどキラキラするものを設置することで虫はよりにくくなるので、これも予防になる。

雑草を刈る

雑草を刈る
害虫は周囲の雑草に潜んでいて、そこからやってくるので、これらを除草することで害虫予防になり、ウィルス病感染予防になります。

手指・道具の消毒

手指・道具の消毒
ウィルスに感染した株に触れた手で別の株に触れると簡単に感染します。また、感染した株を剪定したハサミやナイフを消毒せずに、そのまま別の株に利用すると感染します。これは接触感染・汁液感染しないウィルスなら必要はないですが、細菌・カビでも感染するので消毒はどちみち必須です。消毒液を作り、そこにハサミを何個かを浸けて、一株ごとにハサミを替えて剪定する。
消毒には以下のものを使うといいです。
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ウィルスは95度以上を10分でほぼ死滅するので、株一つだけの剪定ならば10分の煮沸消毒でもいいです。

石灰で強いアルカリ水を作り、ウィルスのタンパク質を溶かして消毒することもできる。石灰を水に溶かし、うわずみ液を使う。これでハサミ・ナイフを消毒するが、pHでは「12」くらいのもので2時間ほど石灰水に浸さないとダメ。よってあまり現実的・効率的ではない。消石灰を使う。苦土石灰ではpHが12にはならない。できれば酸度計を使って計測して消毒する。
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予防薬もある

レンテミンはシイタケから抽出した抗ウィルス剤。使用すると予防できる。治療効果はない。あくまで予防のみ。ハサミ・指などの消毒薬としても使えるが、散布の場合でも3倍〜10倍の希釈、消毒の場合は原液で使うと考えると「高価」すぎる。貴重なラン類で絶対に感染させられない株だけに散布ってのが現実的な使い方です。
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ウィルス病発症後の対処法

廃棄

感染したウィルスを駆除する薬剤はないので、基本的に感染したら株ごと廃棄。廃棄するときに、他の株に触れないこと。さっさとビニール袋に入れて廃棄する。落ち葉も取り除いて土壌感染もできるだけ避ける。

腐食させて不活性に

感染した株を廃棄しても、その残渣(落ち葉・根・茎など)が土中に残る。ウィルスの種類によっては残渣に感染力を持った状態で残り、このままだと今後も感染が発生する(土壌感染)。

土壌感染するものでも、腐食すれば感染力を失う。作物を育てた後に、連作を避けて寝かせることで、腐食させて次の感染を防ぐ。腐食すれば数ヶ月で活性は失われるので一年土地を寝かせて予防する。そんなに待っていられない場合は、土に水をやり、ビニールを被せて地温をあげて…38度で30日〜40日ほど…腐食させることもある。ただ、「絶対」ではない。ウィルスが完全に死滅するとも限らない。あくまで感染を防ぐ「確率が上がる方法」程度の認識でお願いします。無論、一般家庭ではそれで十分なんですが。
●ウィルスは熱に弱いので、農家では土を熱消毒することも(100度の蒸気で)。
●一般家庭では土を丸ごと新しいものに取り替えるのが一番無難。
●大抵のウィルスは95度前後まで温度を上げて10分ほどで死滅する。ビニール袋に入れて炎天下に放置するだけでは内部の温度は80度くらいなので不十分。

隔離する

園芸植物の場合、感染しても枯死しないこともある。その場合、感染が広がらないように隔離して、そのまま管理するという方法もある。

球根は栄養繁殖…つまり親株と繋がっていたクローン体であるため、ウィルスに最初から感染していることが珍しくない。ユリ・ヒガンバナなどは感染しても花は影響がないので、選別がほとんどされない。チューリップは花に影響が出るので業者はチェックはしている。

しかし、ウィルス感染を問題にしていては植物が流通できないのも事実で、ガーデナーが苦労してどうにか探して手に入れた株が最初から感染しているということはある。希少種だと感染しているからといって手放せないし廃棄もできないなんてことはある。

そもそもウィルスは必ずしも多大なダメージを与えるとは限らず、これほど問題になるのは野菜・果実で大ダメージを与えるウィルスが存在するからだが、ほとんどのウィルスは無害か、害が少ない。野菜や果樹に関しては一箇所に大量に栽培し、一つが感染して放置してると全滅は間違いないので廃棄するが、一般家庭で野菜・果樹ではない少量の園芸植物を隔離して栽培するのは現実的な選択としてある。

雑記

●ガーデナーって専門になるんですよね。ギボウシならそれがばっかり、ランでもシンビ専門、カトレア専門と。するとウィルスが感染しやすい種類が一箇所に集まることになり、被害が早く、拡大しやすい。
●ウィルスよりさらに小さなものが「ウィロイド」。
●植物にも免疫があり、植物は一度ウィルスに感染すると同じタイプのウィルスには感染しない性質がある。そこで、弱毒のウィルスに感染させて、危険なウィルスに感染しないようにするワクチンもある。
●ワクチンは開発され、ある程度の効果があるようだが、実用化まではなかなか。
●ウィルス病は「治療ができない」「処分するしかない」とされて恐怖に思うが、まずは落ち着こう。ウドンコ病やその他の斑点病かもしれない。植物の病気は大抵はカビで引き起こされる。次に虫がいないかよくチェックしましょう。
●ウィルス病に感染した野菜・果物を食べても大丈夫です。人間に感染はしない。ただし、感染した野菜に触れた手で未感染の植物に触るのはやめましょう。手を洗ってから作業をします。
●次亜塩素酸ナトリウム…ウィロイドにも効果がある。
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