コウモリラン栽培の詳細版…すでに栽培している人向け

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コウモリラン詳細版
コウモリラン詳細版
科名ウラボシ科
属名ビカクシダ属
学名Platycerium bifurcatum
耐寒5度
水やり水を好む
場所日の当たる室内
難易度上級者向け
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植え
肥料
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コウモリランとは?

コウモリランウラボシ科のアフリカやアジアやオーストラリアの熱帯地域で生息する着生シダ。胞子で増えます。蝙蝠(コウモリ)蘭という名前以外に麋角羊歯(ビカクシダ)という名前もあります。コウモリに例えたり麋(トナカイ)の角に例えたりと、独特な容姿から興味はあるけど、意外とヤフオクでも高価なので手が出ない――そんな人も多いはず。自生地では樹木にへばりついて生育し、非常に大きくなります。

シダの仲間なので花は咲きません。
裸葉(貯水葉)というのが外側からオニギリの海苔のようにくるんでいる部分です。最初はミドリですが茶色になります。茶色になっても裸葉(貯水葉)は剥がし取らないでください。この部分に貯水組織があります。水やりの時はこの部分にも水をやるようにします。胞子葉というのがトナカイの角に似た葉っぱのことです。
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ちょっと独特な見た目と性質なのでまずはホームセンターなどで売ってる安い個体から栽培して、気に入ったら品種名のあるお高いものに挑戦するのがいいです。ネットで流通しているのはあきらかに高い(もう、不当だと思うくらいにさ)。

最初に簡単にまとめ

●水苔が乾いたら水をやり、葉っぱに霧吹きで水をやる。
●肥料は控えめに。
●春と秋は日当たりで、夏の直射日光には葉焼けするので遮光するか明るい日陰で管理する。
●冬は室内で管理。寒さには弱いです。
●植え替えは2年に一回か、よほど大きくなってから。生育時期の5月〜9月に行う。

メリクロンとTC苗

メリクロンで増やした原種が結構流通して、値崩れしてます。メリクロンは細胞を無菌培養したもので、親株と全く同じものです。別に劣っているところはないので気にしないでいいです。ちなみに、メリクロンは分裂(meri)組織培養(clone)のことで細胞の一部を培養して新たな株を作ること。

TC苗という表記も見られます。TC苗とはTissue Culture苗のこと。Tissue Cultureとは組織培養のことでコウモリランに関してはメリクロンと同じ意味。TCの反対はOC(Original Culture)。
●大きく育てるとヤクオフで高く売れるらしい。

3年で枯れる?

よく3年くらいで枯らすと言われる。日本の環境が合わず、3年で徐々にエネルギーを使い果たして枯れていく…というのもあるが、花が咲かないし、変化が小さいので3年で飽きる人が多く、情熱を失い、世話を忘れがちになるのがその頃…というのもある。

以下の選抜された特徴のある品種であれば、成長するにつれ枝別れてして楽しいので、そういうものを選んで買い、無印コウモリランは廃棄することでモチベーションを維持するといいです。

山取り・山採りって?

自生地の現地から取ってきた株のこと。自生地で大きく育ってから、環境の違う日本に持ってくるため、環境に合わずに弱っていくことが多い。しかし、山取りというのはブランドとなっているのか、高値がつきやすいのも事実。

仲間・品種

リドレイ

リドレイ(Platycerium Ridleyi)はボルネオ・スマトラ・マレー半島に自生する、丸い葉っぱに葉脈が浮き出るのが特徴の種。葉っぱに水を貯める性質が弱いため、乾燥が苦手。葉水をまめにやるようにする。
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エレファンティス

エレファンティス(Platycerium elephantotis)はアフリカ原産で学名の通り象の耳のように非常に大きな葉っぱが特徴。流通量が少なく、価格がそこそこ高い。

ウィリンキー

ウィリンキー(platycerium willinckii)は葉っぱが細いタイプで、うねりつつ垂れ下がる。
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ワイルドキャット

ワイルドキャット(Platycerium willinckii cv Wild cat)はウィリンキーの品種。葉っぱが成長すると細く枝分かれしていく。
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エープラス

エープラス(Platycerium willinckii 'Aplus')はウィリンキーの品種。葉っぱは最初は太い一本ですが、成長すると枝分かれし、その枝分かれした先がカールする。

スノークィーン

スノークイーン(Platycerium pewchan 'Snow queen')はビカクシダのピューチャンの品種。葉っぱが白く、深く枝分かれする。

余談…このタイプの業界のブランド

胞子から新しい株を作り出す中で、独特な形状のものが出てきます。これを販売する中でその形状に名前がつき、ブランド化し、高値がついていきます。

で、ここで大事なのは選抜する人(もしくは組織)です。このブランド化には目利きができる実力者が必要で、こうなると「誰が選抜したか?」「誰が育てたのか?」ということが問題になり、そういう有名人が出てきます。

しかし一方でそういう有名人が金儲けに走るあまり暴走したり、個人の価値観を押し付け始めると、業界は衰退していきます。

ということを念頭に置いて、ネットの掲示板や即販イベントを見ると面白いかもしれません。

水やり

水苔への水やりは乾いてから

まずは水苔や土が乾いていたら水をしっかりとやります。乾くまでは水をやらないようにします。コウモリランは多湿を好むのですが、それは「空気が多湿」を好むだけで、水苔や土が常時湿っていると腐って枯れてしまいます。

あくまで水苔・土が乾いてから水をやるようにしてください。

水苔が水を弾いたら?

水苔があまりに乾燥すると水をやっても水を弾きます。そういう時は株全体をドボンと水を張ったバケツなどにつけてやるか、ジックリと時間をかけて水をやります。

葉っぱが細くなったら?葉先から枯れたら?

葉っぱが細くなってくるようなら水やりが少ないです。また、水が不足すると葉先から黒くなります。特に株が大きく育ってくると、葉先が黒くなりやすいです。これは株が大きいと必要とする水分が多くなるためです。

葉っぱに霧吹きで水をやって乾燥を防ぎましょう。

霧吹きで水を

コウモリランは高温多湿を好みます。水やりは霧吹きで葉っぱと植え込み部分の両方に水をやってください。特に夏は乾燥しやすく、また冷暖房が利いた部屋は乾燥しやすいので葉水は必須です。株の下の茶色い部分を裸葉(貯水葉)といいます。

この株を包み込むような葉っぱに貯水する部分があるので、ここを中心に水をやってください。

根元へより葉へ

空気中の湿度の高い状態を好みます。根元への水やりより、葉っぱへの霧吹きで水分をあげるようにします。特に株が小さいうちは乾燥しやすいため、葉水で給水頻度を増やしましょう。

生育期はより葉水を

生育期は乾かさないようにすれば、どんどん大きくなります。

冬は水を控えましょう

冬は水やりの頻度を少なくします。10度以下になると生育は止まり、水をあまり必要としなくなります。1週間に一回くらいの水やりにします。水をやりすぎると腐ってしまうので注意します。

また、コウモリランは耐寒性があり、耐寒温度は5度と熱帯性の植物にしては寒さに強いのですが、これは水を控えることでコウモリランの体液の濃度が上がり、耐寒性が強くなるので、水を控えることで0度くらいまで耐えます。そうはいっても霜に当たると枯れますので冬は室内に取り込んでください。

肥料

肥料は沢山は必要ありません。薄い液体肥料を貯水葉にあげてください。肥料が無くっても枯れはしません。貯水葉は大きく広がって、そこに虫の死骸や落ち葉や鳥の糞を受けて、細菌で分解して栄養にするという役割があります。粒状の緩効性肥料をやるときは、この貯水葉の中に入れてください。
●固形肥料をやる際に、有機肥料だとコバエが発生しやすいので、化成肥料にするといいです。
●肥料は種類によって控えめにした方がいい。ビフルカツムなどは頑健で肥料を好むが、他の種は肥料を控えめにした方が健康に育ちます。

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植え付け・植えかえ

板への植え付け

よほど大きくならない限りは植え替えはしません。大きなものに植え替えると大きくなりますが、植え替え自体がストレスで根を痛めると枯れることがあるので、できるだけ避けます。植え替えをするのであれば、5月から9月の生育時期に行います。

コウモリランは鉢植えもありますが、本来、木に着生するものですから、ヘゴやコルクや板などに着生させて育てた方が良いです。株元を水苔で覆って、鉢に植えたり、着生させればいいです。コウモリランの自生地の環境を考えると鉢植えより板付の方が適しています。実際、板付の方が生育がいいです。

手順

手順
板に着生させる場合は、板に釘を打って、釘に紐(=麻紐やワイヤー)で水苔部分を固定するか、板に穴を開けて、穴に紐(=麻紐やワイヤー)を通して水苔を固定するかします。傷んだ根は取り除きます。最低でも現状の根の半分以上は残すようにします。貯水葉が成長すると板に着生するので、そうなったら紐は外しても大丈夫です。外さなくてもいいですけど。

植え替えをすると意図せずとも根にダメージがあります。植え替え後はしばらく…2週間くらいは涼しい日陰で管理して養生しましょう。

貯水葉の下から子株が出てきます。この子株の葉っぱ(胞子葉)が3枚以上になったら切り離して新株にします。

板植えの注意点

板植えの注意点
●水を上げすぎると根が広がりにくく、着生が遅い。
●まず、胞子葉が出てきて、その後、貯水葉が出る。貯水葉があんまり出なくても焦らない。
●種はないですが、胞子で増えます。胞子をティッシュや水苔で乾燥しないように管理すると発芽して株を増やすこともできます。
●板への固定はしっかりと行う。成長点がグラグラしているとよくない。固定するためには水苔は多めの方がいいです。
●板を杉にすると若干着生しにくいが、着生はする。ツルツルして剥がれやすいので子株を取るときに剥がしやすいくらい。
●上に伸びるタイプは板の下の方に株を配置した方がバランスがいいし、見栄えもいい。
●板付の紐の蒔き方は個々人にこだわりがあって、どれが答えってのはない。イラストであげたのも一例です。
●板付の水苔を半円球にすると育った時にバランスが悪いので、薄く仕立てた方がいい、と考える人はいるが、育てているうちに仕立て直すことは多く、そこまで重要でもない。
●板付で水苔が多いと、水をやると重くなり、落下することもある。
●水苔にベラボン(ヤシ素材の材料)を足してを利用すると水捌けがよくていい。
苔玉は管理が難しい。おそらく表面は乾燥していても苔玉の中に水が残っていて、過湿になるのではないかと思われる。苔玉より板付に仕立てた方が管理が楽。
流木に着生させるのもあり。かっこいい!。ただ、植え付ける前によく洗い、水につけて塩抜きしましょう。もしくは川の流木で。

鉢植えの土での植え替え

根を傷めると枯れることがあるので、よほど大きくなって手に追えないようにならない限りは植え替えは避けます。鉢植えへの植え替えも5月〜9月の生育時期に行います。

水苔に株元を包んで突っ込んでもいいし、ピートモス8パーライト1軽石小粒1の配合土で鉢に植え付けましょう。板付の方が自生の環境に似ているんですが、なかなかのDIY作業になり得意じゃない人も多いでしょう。その場合は、上記の用土で鉢植えに植え付けするといいです。

小さめの鉢を用意し、鉢底の穴を網で塞いで半分ほど軽石を入れます。軽量化と水捌け向上のために発泡スチロールが混ざってもいいです。その上に用土を入れ、株を入れます。もしくは水苔を軽く包んだ株を入れます。終わったら、水をしっかりとやり、1週間から2週間ほどは涼しいところで管理して養生しましょう。

管理場所・日当たり

春と秋の管理について

日光を好みますが耐陰性があり、夏の直射日光に弱いです。

春と秋はできるだけ日当たりで管理します。コウモリランは森の木に着生して生きる植物で、ガンガンと日光を浴びて生活していません。ずっと木漏れ日の中で自生しています。なので日当りを好むのですが、日本の真夏の直射日光に当てると葉焼けを起こしてしまいます。夏だけは直射日光を避けて、戸外の日陰か室内のレース越しの日に当ててください。もしくは遮光ネットで遮光(50%)します。

比較的耐陰性があり、少々日陰でも大丈夫です。ただ、日光が不足すると徐々に株が弱り、葉っぱが黄色く変色してきます。

春と秋の注意点

●シダ植物で日陰じゃないと枯れるイメージを持ちがちですが、そのイメージよりは日光を好みます。日光に当てることで株がガッチリと大きくなります。
●春と秋は戸外の日当たりか室内の日当たり。夏は室内か戸外の日陰か、カーテンなどで遮光した場所。冬は室内の日当たりで管理してください。
●春に戸外に出すときは、いきなり強い日差しに当てずに、室内の明るいところ→戸外の半日陰→戸外の日当たり、という風に徐々に慣らしてあげてください。
●遮光ネット・寒冷紗などの日光を遮るものは、ホームセンターにも売っていますが、100円均一にも売っています。
●室内で管理する場合、冷房の風は非常に乾燥しているため、直接当たらないようにします。直接当たらないようにし、葉水で湿度を保ちましょう。
●西日本から南の方が栽培は適している。関東では室内でも難しいかな。ビフルカツムなら関東でも育つ。

夏の管理場所について

真夏の強い直射日光には弱いです。夏は遮光するか、室内の日光が当たらない場所で管理します。また、霧吹きで湿度を高めて、扇風機などで風を当ててあげましょう。

夏に屋外管理すると、どうしても葉っぱが垂れやすく、だらしなくなりがち。葉焼けは回復しないのでそちらの方が問題で葉焼けしないように遮光しましょう。葉の垂れは秋になって涼しくなれば回復するので気にせず管理を維持します。

冬の管理場所について

熱帯の植物で寒さに弱く、気温10度以下になると活動が止まり、5度を下回ると枯れてしまいます。5度というのは人が生活している場所であれば、夜中に暖房が切れても下回ることはなかなかない温度です。よって人が生活しているところで管理すれば、越冬は可能です。といっても出来れば10度以上が好ましいですよ。
ただ、冷暖房の風は非常に乾燥していてコウモリランにはキツイです。暖房の風が当たらないようにして、霧吹きをして湿度を保ってください。
●最低気温が15度を切ったら早めに室内に取り込みましょう。
●冬は室内に取り込むことになるので、大量に育てるとキツイ。温室があるか、スペースがあればいいけど。

風通しをよく

風通しが大事。風通しが良くて、湿度が高い環境が適している。風ってすごい大事で、当てると生き生きしてきます。自生地の環境に似ているんでしょう。多湿を好むのですが、蒸れは苦手。文章にすると辻褄が合わない気がするんですが、それでも風が大事。

湿度があるならサーキュレーターを直に当てても大丈夫。種類によっては乾燥して調子を崩すので、様子を見つつ、直当て→弱→首振りと調整しましょう。

トラブルと病害虫

葉先から枯れ込む

葉先のダメージは根の問題。葉っぱの先が黒く枯れ込んでいるなら、根腐れや逆に水切れなどを疑う。植え替え・植え付け直後は意図せず根を傷つけていて、起こりやすいので、涼しいところで管理して回復させてから日当たりに移動させる。枯れ込んだ葉っぱは消毒したナイフで取り除く。

ハダニ

小さなダニで乾燥すると発生しやすい。コウモリランは葉水をして管理するので、これが発生するということは明らかに水やり(というか葉水)が足りていない。葉っぱの裏に住むので葉っぱの裏…貯水葉の裏も霧吹きで水をやりましょう。

アブラムシ

アブラムシは植物の汁を吸う虫。戸外で管理すると発生しやすい。発生したら少数なら取り除き、大量なら薬剤で駆除します。

カイガラムシ

白い塊が見られたらコレ。歯ブラシなどで削ぎ落とします。成虫は自力では動けないため、削ぎ落とした時点で餓死は決定。成虫は白い塊で覆われているため、薬剤がほとんど効かないので、薬剤は幼虫を駆除するのみ。薬剤は2週間おきに散布することで時間はかかるが徐々に駆除できます。

ナメクジ

高温多湿を維持するためナメクジはよく発生します。発見次第捕殺し、誘引剤などを使って駆除します。
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ダンゴムシ

ダンゴムシは基本的に枯草を食べるため、被害はほとんどないが、食べるものがなくなると新芽を食べる。新芽を食べるようなら駆除します。

バッタ

戸外で管理するとバッタ被害に遭うことがあります。近くに食害を受けるような植物があると、そこから引っ越してくるので、雑草を取り除くなどすると、多少は被害を抑えられる。
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