鶏糞…その性質や発酵鶏糞と生鶏糞の違いなど

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鶏糞(けいふん)とは

鶏糞:鶏糞(けいふん)とは
鶏糞は鶏(にわとり)の糞のこと。窒素・リン酸・カリウム・カルシウム・マグネシウムという植物の生育に必要な栄養素がほぼ完備されているため、肥料といえば鶏糞と主張する人すらいる。即効性があり、目に見えて効果があるが、一方で栄養過多で土地が荒れるリスクもある。

日本では鶏肉・卵の消費が多く、養鶏場では毎日大量の鶏糞が出て、その鶏糞は「産業廃棄物」です。畜産農家が鶏糞を廃棄しようとすると結構な経費がかかるため、鶏糞はかなりお安く流通します。液体肥料や化成肥料に比べると格安。ただし、発酵していないものは匂いがする(発酵しているものも少し匂いはする)。ホームセンターで売ってます。
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最初にまとめ

●窒素・リン酸・カリウム・カルシウム・マグネシウムが含まれる肥料。しかも安い。
●窒素が少なく、一ヶ月で窒素不足になる。
●生鶏糞は臭い。使って臭いし、保管中も臭い。
●乾燥鶏糞も濡れると臭い。保管中は密閉すれば臭くない。
●発酵鶏糞は濡れても、そこまで臭くない。
●発酵鶏糞なら「そのまま撒く」「埋める」「水に溶かして撒く」ができる。
●乾燥鶏糞は「埋める」のみ。もしくは油粕と混ぜて発酵させて使う。
●生鶏糞は「埋める」のみ。もしくは発酵させて使う。
●(そんな人はいないだろうけど)匂いが気にならないなら乾燥鶏糞・生鶏糞も発酵鶏糞と同様に使えるが、臭いから普通は発酵鶏糞を買って使う。特に都市部、近所があるなら発酵鶏糞を使う。発酵鶏糞だって十分安い。
●もちろん室内に取り込むような植物には適さない。匂いがあるから。

その他の肥料については
を参考にしてください。

鶏糞に強い肥効がある理由

豚糞・牛糞・鶏糞・馬糞があって、豚糞はあんまり見かけないが、農家がよく使うホームセンターでは見かけます。それはともかく…これらの糞系の園芸材の中では鶏糞が肥料の効果が一番高い。露骨に肥料の効果が見られ、また即効性がある。

では、なぜ鶏糞に強い肥効があるか?

鳥は空を飛ぶためにいろんなものを「軽量化」している。骨も軽いし、血液も少ない。そんな鳥なので、軽量化のために食べたものをすばやく消化して排泄するようになっている。そのため、飼料の栄養を吸収しきれておらず、(牛・豚・馬に比べると)多くの栄養が吸収されずに排泄されている。鶏糞に肥効があるのはこのため。
●日本では養鶏に抗生物質を使うことを禁じているため、鶏糞も安全…と言われています。安全性もあって化成肥料より好む人は多いです。

鶏糞が安い理由は?

養鶏すると当然、糞が出ます。この糞は「産業廃棄物」ですから、処理するのに結構、お金がかかるのです。となると、肥料として流通させれば、お金にもなりますし、処理費も浮かせられる。おそらく鶏糞ではほとんど利益はないんだろうなと思います。

うちの近くのホームセンターでは15kgで88円(2023年5月時点)ですからね。

鶏糞の成分と特徴

ほぼすべての成分を含む

発酵鶏糞は窒素2.5、リン酸5、カリ6のpH8〜9のアルカリ性肥料。割合として窒素が少ない。カルシウムとマグネシウムが含まれていて、植物の生育に必要な栄養素をほぼ全て持っている肥料です。

アルカリ性の肥料だ

生鶏糞(pH6の弱酸性)はそのままでは尿酸が含まれていて、この尿素が根にダメージがあります。そこで好気性発酵させて尿酸をNH3(=アンモニア)にして揮発させ、アルカリ性になったものが「発酵鶏糞」。
発酵鶏糞はアルカリなため、苦土石灰をまくかどうかをよく考える。鶏糞を使うのであれば苦土石灰の量は減らしましょう。よくわからない場合は土壌酸度計で計測して判断します。
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じゃがいもは注意

ジャガイモはアルカリ性だと「そうか病」が発生しやすいので、鶏糞は避ける。

鶏糞にはカルシウムが入っている

鶏糞には石灰が入っている。これは鶏への飼料が由来。なので鶏糞にはカルシウムが含まれるが、土のpHを大きく変えるほどは入っていない。

窒素が少ない

鶏糞(発酵鶏糞も含む)はすべての栄養素を持っているのですが、窒素(N)が少ない。窒素が効かなくなるため鶏糞の肥効は大体一ヶ月(=4週間)とされる。なので一ヶ月に一回程度の頻度で鶏糞で追肥したり、元肥・寒肥として最初は鶏糞で肥料を効かせて、その後は液体肥料や化成肥料で追肥するなどして調節します。

窒素が弱い鶏糞に油粕(窒素が多い)を足して混ぜて発酵させた「ボカシ」を自作する人もいます。

無機化について

鶏糞をまいて4週間で微生物の活動によって窒素の無機化がなくなる。よって鶏糞はまいてから4週間後以降の窒素の肥効は期待できません。無機化とは窒素を分解すること。植物は窒素を吸収するが、分解されたものを吸収するので、「無機化」とは「窒素を吸収する」ということ。無機化しなくなるとは窒素が吸収できなくなるということ。

地温が低いと、無機化が鈍くなる。30度で100とすると、20度で80、10度で60に下がる。

土壌改良剤ではない

鶏糞は土壌改良剤にならない。鶏糞は肥料であって、別途、堆肥腐葉土を入れる必要があります。堆肥などの団粒構造によって鶏糞の肥料成分が土中にとどまります。

有機肥料だ!

化成肥料は便利ですが、野菜類だと化成肥料の匂いが出たり、化成肥料が苦手な植物もありますので、鶏糞は便利です。

鶏糞のデメリット・危険性

土地が荒れる

鶏糞は植物の生育に必要な要素を全て持っているのですが、同じ土地に鶏糞を大量に継続して利用していると土地が荒れます。土地が荒れるというのは「リン酸過多」の状態。リン酸過多になると他のミネラルの吸収を阻害し生育不良を起こします。何事もほどほどに。
●1平方mあたり発酵鶏糞600gが一般的に言われる量。ネットで2kg入れても大丈夫!という主張があるが、リン酸過多・カルシウム蓄積を起こすので何事もほどほどに。

土が硬くなる

鶏糞はカルシウムが多く、土壌内に蓄積する。何度も鶏糞を使っていると土が硬くなり、植物の根が張りにくくなる。ふかふかの土になるように耕して堆肥・腐葉土も定期的に追加します。また、鶏糞の施肥をしばらく休みましょう。

土がアルカリ性になることも

一般的に植え付けるときに土壌を苦土石灰で中和することが多いくらいですから、鶏糞が多少アルカリ性だからって問題になることはないんですが、アルカリ性の肥料であることも、植物によっては問題になることもあります。

酸性の土を好み、中性・アルカリ性の土になると生育が阻害される種類もありますので、各植物の栽培解説をチェックしておきましょう。

寄生虫と抗生物質

採卵(卵を取ることを目的とした養鶏)の生鶏糞には寄生虫のコクシジウムが潜んでいることがあり、ペット(犬・猫・鳥)が感染し、腸が傷ついて血便を出すなんてことが、一定の確率がおきます。そう頻繁にある話ではないですが、ありうる話なので、知っておきましょう。ペットを飼っている人は生鶏糞は使わない方がいいですね。

一方食肉系の養鶏の場合は、餌に抗生物質を入れて病気を防いでいるので、寄生虫の心配はないんですが、抗生物質に耐性をもった菌が鶏糞内に存在していたり、いろんな物質が効いているため、何か影響があるかもしれません。

生鶏糞とは?

生鶏糞は鶏糞そのもの。生鶏糞は尿酸が取り除かれておらず、このまま使うと根にダメージがあるので、使うのであれば、根から離して埋める。匂いが強く、畑にそのまま、まくと匂いがえらいことになるので、広い土地を持っていて、近所に人が住んでいないなら使えるが、普通は生では使わない。埋めて元肥・寒肥にするなら匂いもしないが、余った生鶏糞を保管していて臭いので、とにかく生鶏糞は普通は買わないし・使わない。

庭の一角に積み上げて、ときどきかき混ぜて空気を入れて好気性発酵をさせれば「発酵鶏糞」になります。発酵が終わるまでは臭い。やっぱり匂いがあるので、近所が気になるような場所では発酵鶏糞を買いましょう。
●乾燥させたものが「乾燥鶏糞」で、発酵させたものが「発酵鶏糞」もしくは「鶏糞堆肥」と呼ばれる。
●養鶏場によっては生鶏糞を無料でもらえる。もちろん自身で持ち帰るのですけど。持ち帰って発酵させればいいです。
●ジモティーなどで無料引き取り募集をしていることもあります。生鶏糞が欲しい人はチェックするといいかも。

乾燥鶏糞とは?

生鶏糞を乾燥させたもの。水分を飛ばしているため、購入時には匂いがしないが発酵しているわけじゃないので、水を加えると生鶏糞とほぼ同じ匂いがする。臭いです。生鶏糞と同じように元肥・寒肥として穴を掘って埋めるという使い方が一つ、もう一つは乾燥鶏糞に油粕などを混ぜて発酵させて「ボカシ」を作るための材料として。

生鶏糞と乾燥鶏糞は上級者のアイテムです。
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乾燥鶏糞の利用法

保存
袋は密閉して保存すれば、いつまでも乾燥鶏糞は保存できます。開けっ放しだったり、穴が空いていると水が入って異臭がしたり、ダマになる。ちなみに、保存しておいても発酵が進んで乾燥鶏糞が発酵鶏糞になることはないです。

寒肥・元肥
寒肥や元肥として、根に当たらないように埋めて肥料とする。乾燥鶏糞はそのままでは匂いが少ないが、濡れると生鶏糞同様に匂いがキツイ。地上に撒くと匂いがすごいので、近所迷惑になる。あくまで寒肥・元肥の時に、穴を掘って埋めて肥料を効かせる。

土に混ぜる
土に混ぜると自然と発酵して尿酸は消えるが、発酵するまで2週間〜1ヶ月くらいはかかる。それまで臭いので、一般的じゃない。ご近所トラブルの原因になります。

発酵鶏糞とは?

一般的にネットで「鶏糞」というと発酵鶏糞のこと。生鶏糞を発酵させて尿酸を揮発させています。実際に尿酸が「完全」に取り除かれているわけではないが、匂いが少ないので発酵鶏糞を水に溶かして利用することも可能で便利。

発酵の手間がかかっていても有機肥料としては格安なのは変わらない。安いのでホームセンターで買うといいです。一般家庭のガーデニングであれば1袋で十分。鶏糞を車に乗せるのが嫌ならネットで買うのも手。
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●発酵鶏糞といっても、完全に発酵しているわけじゃないので、匂いはする。


発酵鶏糞を乾燥させてペレット(粒)にしたものもあり、ペレットにすると風で飛び散らないので便利です。都市部や近所の目が気になるならペレット状の鶏糞を使うといいです。
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発酵鶏糞の使い方

元肥として
鶏糞を土に混ぜてから1週間は土中の窒素が不安定になるので、植え付けの1週間前に施肥するようにします。土に混ぜてもいいですし、株の下に埋めてもいいです。株の下に埋める場合は、根に当たらないようにします。
●元肥は1平方mあたり発酵鶏糞600gが目安。


追肥
追肥としても使えます。乾燥鶏糞と同様に穴を掘って埋めてもいいです。もしくは、株の近くにパラパラとまき、土に軽くすき込みます。もしくは、2Lのペットボトルに発酵鶏糞200gを入れて水を入れて液状にしたものをまきます。

寒肥として
株の周囲に穴を掘って発酵鶏糞を埋めます。もしくは株の近くにまく。鶏糞が直に根に当たると根の水分が浸透圧で染み出して「肥料焼け」を起こしますので穴は株の根に当たらない場所にします。地上部の枝は伸びている範囲には地下にも根が伸びているので、地上部の枝の位置から推測して穴を掘って鶏糞を埋めます。

雑記

いろいろ

●生鶏糞・乾燥鶏糞はただまくだけではダメで、発酵させる必要がある。そこで雨が降った後にまく。すると水と合わさって発酵する。もしくは肥料を施肥した後に水をやる。もしくは鶏糞に水を混ぜてまく。もちろん、どれの手順も「臭い」。匂いが近所に問題なりそうなら、発酵鶏糞を使いましょう。
●鶏糞は成分にばらつきがある。
●炭化鶏糞もある。炭化鶏糞はちょっと高いが、匂いがない。発酵鶏糞よりも肥効が高いです。
●スウェーデンではワルプルギスの夜というお祭りがあって、人が集まります。コロナ禍でも集まるのでイベント会場に鶏糞をまいて人が集まらないようにした、なんてことがありました。
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